リニア中央新幹線

静岡県知事のコメント 2018年6月22日

静岡市と東海旅客鉄道株式会社との「中央新幹線(南アルプストンネル静岡工区内)の建設と地域振興に関する基本合意書」の締結〔平成30年6月20日〕に関してのコメント
静岡県知事
静岡県中央新幹線対策本部

 静岡県知事並びに静岡県中央新幹線対策本部は、県民の要望を踏まえ、地域振興に関して、東海旅客鉄道株式会社(以下「JR東海」という)に対し、誠意ある取組みをお願いしてきたところです。 三ツ峰落合線のトンネル工事等の地元振興策については、今回の合意内容が静岡市の地元要望に沿ったものとして評価します。ただし、市民から強い要望のある市道閑蔵線にはまったく触れられておらず、また、大井川流域の市町からも、懸念が表明されていることを申し添えておきます。

 重要な水の問題に関しては、合意書の第2項に 「JR東海が環境影響評価に基づき、中下流域にも配直して誠実に対応する。」とあります。

このことについて、静岡市長は、会見の中で、
「合意書5項日のうち、2の環境保全措置、とりわけ『中下流域への配慮をして、誠実に対応して欲しいということを、強く金子社長に 申し上げ約束していただいた。』」
「水環境については、上流域について新しい提案をいただいているが、現実対応可能な最大限の提案を(JR東海は)したと思っている。」
と発言しています。

 静岡市長が「中下流域への配慮をして、誠実に対応して欲しいということを、強く金子社長に申し上げ約束していただいた。」とのことでありますが、この第2項の内容は、JR東海がかねてから主張していたもので、目新しいものではありません。JR東海は、「環境影響評価に基づき」としていますが、県及び利水者は、JR東海の論理による環鏡影響評価に基づく措置では不十分であると考えています。

 環境影響評価は、工事実施にあたって最低限必要な対策を事業者が検討するものであり、大井川の利水者としては、JR側の論理による環境影響評価に基づく措置ではなく、社会的に理解可能で、県及び利水者が納得出来るものである必要があるとJR東海には何度もお伝えしています。その際、JR東海が主張する「河川流量の減少の程度を計測や解析で科学的根拠をもって特定すること」は、現在の技術力では不可能であるため、利水者としては、「トンネル湧水全量を戻すことが必要であると考えている」こともお伝えしています。

 静岡市長は「強く金子社長に申し上げ約束していただいた」と言われましたが、何を約束していただいたのか、明確にしていただけなければ、理解できません。

 「上流域について、新しい提案」としているのは、6月13日の金子社長の記者会見で表明のあった上流域へのポンプ設置のことだと思われますが、このポンプは工事中に必要な水を戻すために元々必要な設備であり、新たに設置をするという提案ではありません。

 トンネル湧水の大井川水系ヘの水の戻し方の具体的方法については、大井川の自然環境や、より上流部にある沢等の自然環境への影響を考慮し、慎重な検討を要するものです。それに関する新たな内容のものではないにもかかわらず、これを「水環境については、上流域について新しい提案をいただいているが、現実対応可能な最大限の提案を(JRR東海 が)したと思っている。」との発言、即ち評価するとの発言は、この水問題の本質を全く理解していないも同然であります。

 また、仮に、「上流域について、新しい提案」が上記のポンプ設置ではない 「新しい提案」 であったのであれば、市長は、まず、その内容を利水者に情報提供すべきです。

 このような問題がある中、利水者の利害や南アルプスユネスコエコパークの自然環境に重大な影響を与えるおそれのある工事が行われる場を預かる市長として、上記の発言をなさるのは、自分の立場とその発言の影響を理解していないものと言わざるを得ません。また、利水者の思いヘの理解や、自然環境ヘの敬意、科学的根拠も欠けていると言わざるを得ません。

 よって、大井川の水問題についての、記者会見での発言については撤回を求めます。

 以上、大井川の水問題についてJR東海と協議している者として、利水者とともに、静岡市長に対し強く抗議します。

 静岡県としては、大井川の水問題については、大井川流域の関係市町、利水者と連携しつつ、JR東海の誠意ある対応を求める交渉を粘り強く取組んでまいります。

この知事コメントは2018年6月22日に発表したと報じられましたが、「静岡県中央新幹線対策本部」サイトが私には見つからず、ネットにアップロードされていたコメント全文の画像からテキスト化したものです。段落、改行などはWebページとして編集してあります。
静岡県の公式サイトで公開されたら内容を照合して、必要あれば修正する予定です。

知事コメントの理由となった静岡市とJR東海の合意書についてはブログでメモしています・・・静岡市がJR東海のリニア工事計画に合意、県知事はそれを批判(報道記録)(2018年06月22日)