リニア中央新幹線

中谷真一議員の質疑応答、衆議院国土交通委員会 2016年10月26日

西銘恒三郎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷真一君。

中谷(真)委員 自民党の中谷真一でございます。

 本日は、私は、このリニアの沿線ということもありまして、甲府駅が私の選挙区でありまして、そういうこともあって質問の機会をいただけたんだというふうに思います。委員長、先生方、本日この質問の機会をいただきましたことに対しまして、まずは心から御礼を申し上げたいと思います。

 時間も20分と限られていますので、早速質問に移りたいというふうに思います。

 このリニアは、我々山梨県民にとっては夢であります。これは品川から甲府まで15分と言われています。今は、新宿から「あずさ」に乗って甲府まで行くのに1時間半かかります。これはもう革命であります。15分というと、品川―新宿と一緒ですから。品川―新宿より近いかもしれないというぐらいなんです。これは我々が想像していないことが起きる可能性があるというふうに思っています。そういう意味では、これを何とか早くなし遂げて、そして、私のところでは甲府という地域の地方創生という形で発展を願うところであります。

 また、今度、品川と大阪までつなぐことができれば、約1時間でここがつながるわけであります。これは物すごいことであります。1時間といったら東京都内を移動するようなものでありまして、これが大阪まで行けるというものであります。

 私は思うんですけれども、発展というのは、結びつくことによって発展していくというものであります。まさに、これは結びつけるための大きな大きなプロジェクトであります。7千5百万人が1時間以内のところで生活することができるというものでありまして、これは日本にとっても大きな力になっていく。

 我々は、東京対名古屋対大阪みたいな話じゃないんですよ、世界と戦っていかなきゃいかぬわけですよ。北京だったりロンドンだったりニューヨークだったり、こういう世界の都市と戦っていくときに、私は、このリニアが日本の発展を手助けし、そして国際競争力をつけ、他の追随を許さない、そういった国になっていくというふうに思っております。そういう意味では、何とかこのリニアを早くなし遂げていかなければいけないというふうに思っております。

 今回、財政投融資3兆円を入れることによって、これは東京、名古屋をつなぐその後の話でありますけれども、ここから18年間かけて今度は大阪に延伸していくという話であります。これだと非常に時間がかかり過ぎるというものであります。特に、8年間は工事も何もできない期間があったというものであります。

 では、この期間を短縮するために、今回、財投3兆円をJRに融資するということでありますけれども、ここで詳しく説明していただきたいというふうに思います。3兆円入れることによってなぜ8年間前倒しすることができるのかというところを、国土交通省からお答えいただきたいと思います。
政府参考人 奥田 哲也君(国土交通省鉄道局長) お答え申し上げます。

 リニア中央新幹線につきましては、従来の計画によりますと、JR東海は、平成39_2037年の品川―名古屋間開業後、経営体力を回復させるために、工事を行わない8年間の期間を経た上で、名古屋―大阪間の工事に着手することといたしておりました。

 今般の措置は、財投の長期、固定、低利の貸し付けによりまして、この8年間の経営体力回復期間をなくし、品川―名古屋間開業後、連続して、名古屋―大阪間の工事に速やかに着手することで、全線開業の前倒しを図るものでございます。

 具体的には、品川―名古屋間の工事に充てるために調達が必要と見込まれております3兆円について、一括で貸し付けが行われることによりまして、JR東海は、金利変動リスクや、多額の資金需要に対応できないという資金調達リスクを回避することができるわけでございます。

 これによりまして、8年間の経営体力回復期間をなくし、全線開業までの期間を最大8年間前倒しすることを目指すことが可能になるというものでございます。
中谷(真)委員 ありがとうございます。

 今おっしゃったように、この3兆円を今やることによって、最大8年間、大阪までつなぐのが前倒しできるというものであります。

 これは別に、公共事業といっても、使ってしまうというお金ではなくて、貸し付けですからね。これは返ってくるものであります。そういう意味では、ここで国としてお金を貸すことによって8年間も前倒しできるというのは非常に大きな効果だというふうに僕は思います。

 それで、その効果についてちょっとお伺いをしたいんです。

 今、3兆円の財投をやるというときに、何で今なんだと言われる方々がおられます。何で今やる必要があるんだ、これは経済対策なのであって、リニアは東京―名古屋間が11年後ですから、11年後にきいてくることじゃないか、今やる必要があるのかということを言われる方がおられます。

 ただ、これは、私は、今やるメリットというのはあると思うんですよね、大きなメリットが。今の金利の環境を生かすとか、そういうことがあると思います。

 8年間前倒しすることによって得ることができる経済的効果というものを国土交通省が試算されているのであれば、ぜひ教えていただきたいと思います。お願いします。
石井 啓一 国土交通大臣 6月1日の総理会見におきまして、現下のゼロ金利環境を最大限に生かし、未来を見据えた民間投資を大胆に喚起します、新たな低利貸付制度によって21世紀型のインフラを整備しますとの御発言がございました。また、7月11日の総理会見におきまして、現下のゼロ金利環境を最大限に生かし、財政投融資を積極的に活用しますとの御発言があったところでございます。

 今般の措置は、現下の極めて低い金利環境を活用いたしまして、財投の長期、固定、低利の貸し付けを行うことによりまして、8年間の経営体力回復期間をなくし、品川―名古屋間開業後、連続して、名古屋―大阪間の工事に速やかに着手することで、全線開業の前倒しを図るものでございます。

 なお、交通政策審議会におきましては東京―大阪間の経済効果しか試算をされておりませんが、その後、国土交通省におきまして、平成26_2014年に、国土形成計画の調査の一環として、最新のデータを用いて改めて経済効果の試算をしております。これによりますと、あくまで参考値ではございますが、2045年の全国合計の生産額増加が、東京―名古屋間のみが開業している場合においては年間5千2百億円、東京―大阪間が全線開業した場合において年間8千8百億円とされております。

 したがいまして、この数値を前提とすれば、その差額である年間3千6百億円の生産額の増大が8年早くあらわれるというふうに考えております。
中谷(真)委員 3千6百億掛ける8ですから、これは非常に大きな経済効果だと思います。これは投資してなくなるというものではなくて、返ってくる話でありますから、私は、これは国として非常にいい政策だというふうに思います。

 また、今じゃなきゃだめなんですね。ゼロ金利環境というか、この環境を最大限生かすという意味でも、私は、今回、今ここでやっておくべきだ。この後ではできない可能性もあります、金利によっては。ですから、今やるべきだというふうに思います。まさに今大臣がお答えになったとおりだというふうに思います。

 ただ、メリットに対して、やはりデメリットを言われる方々もおられます。そこで、それについて質問をしたいというふうに思います。

 財投でやっていくんですけれども、新聞によっては、実態は国民の借金だと書いたりとかするんですね。そんなはずはない、違うんだ、貸し付けて返ってきますから。これに対して、さらに言う人は、返ってこないんじゃないか、だからそれは国民がかぶるんだみたいな、そういうふうな論調もあるんです。

 そこで、私がお伺いしたいのは、今までも財政投融資をやってきたと思います、その財政投融資で回収できなかったケースがあるのかというところを財務省にお伺いしたいと思います。
政府参考人北村 信君(財務省理財局次長) お答えいたします。

 過去、財政融資資金が貸し倒れ、回収できなかった例はございません。

 財政投融資計画の編成に当たりましては、財投機関の財務の健全性の確認や、融資対象事業のプロジェクトの政策的意義、実現可能性等を厳正に審査しておりますほか、貸し付け後も事業の進捗状況等について財投機関にモニタリングを行っております。また、実地監査により、財務の健全性、資金の適正な執行等についてモニタリングを行い、償還確実性の確保を図っているところでございます。

 今後とも、編成過程での厳格な審査や、貸し付け後の適切なモニタリングや実地監査を通じて、償還確実性の確保を図ってまいりたいと存じます。
中谷(真)委員 ありがとうございます。

 今、論調として、返ってこなくて国民の借金になるとかということを言う人がいるんですよ。ですから、今までそんなこともないし、今回の貸し付けについてもしっかり精査してやっているんだというところを、私は政府としてしっかり発信していただきたいというふうに思います。

 実態は国民の借金とかと書くんですけれども、わざとミスリードしているんじゃないか、理解しようとしないのか。僕は、そうではないんだ、これは借金ではない、あくまでも貸し付けである、ここの部分をぜひ強く発信していただきたいと思います。そして、国民の皆さんの不安をしっかり払拭していただきたいというふうに思います。

 さらに、通常、国が貸し付けをしなかった場合については、銀行とかからJRさんは借り入れをする予定だったというふうに思います。ただ、今回、国がやるということでありまして、民業圧迫じゃないかということを言っている方々もおられます。

 これに対して、財務省、よろしくお願いします。
政府参考人 北村 信君(財務省理財局次長) お答えいたします。

 リニア中央新幹線につきましては、現下の低金利状況を生かし、長期、固定、低利の財政投融資を活用することによって、建設主体であるJR東海の資金調達リスクや金利変動リスクが軽減され、これによって全線開業を最大8年間前倒しすることが可能となるものでございます。

 民間の金融機関において、財投と同様の長期、固定、低利の条件で3兆円という資金を融資することは困難と考えられますので、民業圧迫といった御批判は当たらないものと考えております。
中谷(真)委員 民間にできないことであるから今回国がやるものであるということで、これは民業圧迫に当たらないというところは、私もそのとおりだというふうに思います。

 私は、このリニアの議論は、リニアをやるかやらないかという議論じゃない、これはやるんだ、やって、この国の将来をしっかりつくっていくんだというものだと思います。ただ、どうやるかという議論だというふうに思います。そういう意味では、今回の3兆円の財政投融資がいかにこのリニア建設に大きなメリットを与えるかということがわかったんだというふうに私は思います。ぜひやっていただきたいと思います。

 私、今回、甲府が駅だということで、地元のことをちょっと申し上げたいと思います。

 私の地元から強い要望がありまして、2020年までに、これはオリンピックに間に合わすという意味ですけれども、品川と甲府で部分開通したらどうだと。これは山梨県民みんなが言っているんです。ぜひ部分開通して、そしてオリンピックで世界から来た人たちにリニアに乗ってもらって、そして富士山に行ってもらう。ただ、残念ながら、甲府駅からは富士山は見えないんですけれども。おりていただいて、ちょっと行けば見えますから。今、そういう要望が非常に強くあります。

 前回の東京オリンピック大会に新幹線は間に合わせたんですよ。私は、日本の国力をもってすればそれは可能だというふうに思います。

 これに対して、国土交通省さんから見解をいただきたいと思います。
政府参考人 奥田 哲也君(国土交通省鉄道局長) お答え申し上げます。

 リニア中央新幹線の品川―名古屋間の工事完了時期につきましては、平成26_2014年に認可をいたしました工事実施計画におきまして、平成39年、2027年とされているところは先生御案内かと存じます。

 同区間の工事につきまして、このうち品川駅につきましては、現在走行している新幹線の直下にリニアの新駅を整備するもので、新幹線の走行に影響を与えないなど、わずかな地盤の沈下などにも注意しながら行ってまいります極めて慎重な工事になりますため、工期が約12年程度と見込まれております。

 また、品川―名古屋間を走行いたします車両は、品川―甲府間にございます車両基地で日常のメンテナンスが行われるわけでございますが、部品交換等の修繕は岐阜の車両工場で行われることになっております。このため、部分開業する場合でも、車両基地に加えまして車両工場など、開業のための関連施設もセットで整備する必要がございます。

 オリンピックに合わせて外国の皆さんにリニアの技術を見ていただくという御趣旨、大変私どもも賛同いたすところでございますけれども、これらの点を踏まえますと、2020年までの部分開業は、お尋ねいただいて大変恐縮でございますが、難しいものと承知をいたしているところでございます。
中谷(真)委員 難しいことはよくわかりましたが、引き続き求めていきたいというふうに思います。

 さらにいろいろお伺いをしたいというふうに思います。

 私の地元の甲府駅というのがあるんですけれども、甲府駅の周辺は川が走っていたりということで、水につからないように護岸工事をやらなきゃいけない。また、駅周辺というのは、今、実は田んぼであります。いわゆる農地であります。この農地を農転したりとか、土地の利用を変えたりとか、そして、いわゆる都市計画をつくったりとかということをやっていかなきゃいけない。

 また、きょう午前中、森地先生が言っておられましたけれども、高速道路と駅をつなぐとか、こういうことは地元がやっていかなきゃいけないことだというふうに思います。ただ、これは国の事業とあわせてやっていかなければいけないというものでありまして、最大限その経済効果を高めるには、ここは、国と駅ができる自治体が一緒になって計画を練って、いわゆる駅周辺インフラも、制度設計もあわせてやっていかなければいけないというふうに思います。

 これについて、国土交通省さん、今、どういう枠組みでやろうとされているのかというところがあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。
政府参考人 奥田 哲也君(国土交通省鉄道局長) お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、リニア中央新幹線の経済効果をより高めるために、例えば、駅を抱えます自治体の方々との協力体制は大変重要であるというふうに思っております。

 交通政策審議会の答申におきましても、中央新幹線の整備は、三大都市圏間及び三大都市圏へのアクセスの利便性を飛躍的に向上させ、地域の活性化をもたらす可能性がある、中央新幹線の開業を見据え、旅客及び時代のニーズを踏まえ、地域特性を生かした産業や観光の振興など、地域独自の魅力を発揮する地域づくりを戦略的に実施していくことが極めて重要であるというふうに指摘をされております。

 こういった中で、私どもといたしましては、新幹線の例でいいますと、北陸新幹線につきまして、整備主体であります鉄道・運輸機構でありますとか鉄道事業者とともに、例えば富山駅前の駅前広場整備でありますとか、まちづくりに一緒に協力して取り組んだ事例がございます。

 現在のところ、リニアの沿線で具体のプロジェクトはまだ承知をいたしておりませんけれども、リニア中央新幹線の整備に当たりましても、こういった過去の新幹線整備の際の経験も生かしながら、駅周辺のまちづくりでありますとか既存の交通機関とのアクセスなど、さらに地域が活性化するよう、地域の取り組みに対し必要な支援をさせていただきたいというふうに思っております。
中谷(真)委員 ありがとうございます。

 これは非常に重要なことだと思うんですね。これは、ただ通すだけではなくて、駅ができたところとか、こういったところに経済的効果をもたらすということでありますから、今までの整備新幹線の例がありますので、それを踏襲するか、またさらにバージョンアップして、ぜひ当該自治体と一緒になってやっていただきたいというふうに思います。

 このリニアは、必ず私は日本の今後の将来をしっかりつくっていくその大きな原動力になると信じております。一刻も早い東京から大阪までの開通を心から祈るものであります。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございました。終わります。
以上、国会議事録から中谷真一議員による質疑応答を抜粋したものです。
縦書き文書で用いられる数字はアラビア数字に変換し、元号表記に西暦を付加、長いセンテンスを適宜改行するなど、Webページとしての編集のみ行なっています。
答弁者については会議録掲載のフルネームと役職の記載に修正しました。
その他文中の注釈やリンク設定は編者によります。

石井啓一国土交通大臣が答弁で言及した2016年7月11日の総理会見は官邸サイトでは確認できませんでした。

参照・衆議院_会議録_第192回国会 国土交通委員会 第4号(平成28年10月26日(水曜日))